東京都知事候補、小池百合子氏のこのツイートがものっそいいきおいで注目を集めており。
私は東京を文化の発信地にしていきます。コミケ開催地も出版社もその多くが東京にあるのです。東京都が総力を挙げて、コミケを応援します! pic.twitter.com/QF5Iyu2kQM
— 小池百合子 (@ecoyuri) July 17, 2016
「東京を文化の発信地に」「コミケを応援」すると都知事候補がコスプレ付きで明言されているのであれば「おっ理解のある候補かな?」って感じで歓迎されるはずなのに、現実としては「表現規制派の人気取り」と目されています。
どうしてこうなってしまっているのか…
実は「ぐぐったらすぐでてくるやろ」と思ったのですが、実際ぐぐってみると意外とこの発言とその反応に検索結果が流されてしまっているのでよくわからない。なので備忘録がわりに残しておきたいと思います。
過去に何があったのか
平たく言うと「児童ポルノ法改正で漫画、アニメ、ゲームも対象に含められそうになっていたとき、それらも対象にした単純所持を早く可決しろという請願を出した」ということがあったのです。
こちらがその問題の請願。
内容についてはこちらになります。
新件番号 35 件名 青少年健全育成のため、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の早期改正を求めることに関する請願 要旨 現行の「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」では児童ポルノの売買や譲渡は処罰の対象としているが、「単純所持」は処罰されない。また、ネット上においても、児童ポルノをパソコンや携帯電話に取り込む「単純所持」が許される限り、違法画像が児童ポルノサイトに掲載されると、不特定多数の利用者がコピーを繰り返し、画像が無数に広がり、負の連鎖を断つことができない。さらに、漫画やアニメ、ゲームソフト等「仮想のわいせつ画像や性的虐待の表現」も目に余り、これ以上、児童ポルノの氾濫を放置しておくことはできない。一日も早く児童ポルノサイトに接続できなくなる制度等を導入し、全ての「単純所持」を処罰できる有効な法律改正をすべきである。
ついては、次の事項について実現を図られたい。一、児童ポルノに関して、全ての「単純所持」を処罰できるよう、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」の早期改正をすること。
漫画やアニメ、ゲームソフト等を対象とすることを明言したものになっています。
それでこちらの請願を提出した紹介議員が次のお二人になります。
紹介議員一覧 受理番号 1号 細田 博之君
受理番号 12号 小池 百合子君
衆議院議員時代にこちらの請願を提出したことにより、「表現規制派」と目されているわけですね。
(どうして情報と内容で掲載サイトが衆議院と参議院に別れているのか…衆議院のほうには内容が乗っていないし、番号も違うしちょっと不安になります。第178回国会であることと、件名が同じなのでたぶんこれでいいはずだと思うのですが…もし資料の読み方が違っていたらごめんなさい。訂正するので教えて下さい)
(2016/7/20追記)
コメントで次のような情報いただきました。ありがとうございます。
コミケの応援をしているという小池百合子都知事候補がなぜ表現規制派といわれているのか理由を掘り起こしてみた – script life 千夜一夜
"参議院と衆議院はそれぞれ独立した機関ですので、請願については互いに関与せず、別個に受け付け、審査しています。" http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/seigan.html http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_annai.nsf/html/statics/tetuzuki/seigan.htm
ひとつの請願を衆議院、参議院の両方で審議する、ということのようなので、資料の読み方的には大丈夫そうです。
おときた駿都議会議員が直接聞いてみた件
それでこの「コミケを応援」の件について、実際どういうことなのかをおときた駿都議会議員が直接小池百合子候補に聞いてみた記事がこちら。
個人的な感想としては、 「表現規制派と言われることは極めて遺憾」と最初に言っているところから、「そもそもなぜ表現規制派と呼ばれているのか理解していなかった」という反応みたいなところもあり、確かにそこまで強硬なものではないのかもしれないというところでもありました。
けれど逆に、「不健全なものは規制されて当然(当然のことをしているだけだから表現規制派ではない)」という発想なのかもしれない。この場合、「コミケを応援する」ことと「表現規制をする」ことは(小池氏のなかで)矛盾しないので、「コミケを応援して東京を文化の発信地にするために「浄化」します!」という事態になりかねない可能性もあります。
表現規制する人でもね、「いいマンガ」は「ええよええよ」っていうんよ。同じ口で「けしからんマンガは粛正しろ」っていうけど。だから内容が良い悪いの話じゃない、実在被害のない創作物を法で規制すること自体が問題なんだという話、文化的側面では「けしからんマンガも名作も人によって評価は違う、それらは等しくごった煮な状況から生まれる」ということからまず入らないとなあと思います。
(その上で、それこそ子どもの目につかないように配置やゾーニングを見直すなどの話はする価値があるとは思っています。ただそれは方法によっては事実上の検閲にもなるので、実際に提案される内容次第にはなりますが…)
また、衆議院議員時代に請願を出すほどのものなので、(当時は?)そういった表現規制を推進する何かとのつながりがあったのではないかと思います。「考えてみなければいけませんね」というふわっとした回答で終わっているところも、納得が行っていないのか明言を保留しているのかわかりません。
この記事を書かれたおときた氏のほうは、ちゃんとそれが「表現規制である」ことを理解されているようですので、その点についてはポイント高いと思います。
個人的な感想として
今のところの個人的な感想としては、「請願が提出されたのは第178回国会、2011年(もう5年近く前になるのか!)のことなので、状況や考えが変わっていても不思議ではない。むしろそうなら歓迎したい」と思いつつも、「過去に表現規制を推進しようとした実績があるので、まずそれについて言及され、表現の自由を守るということが明言されなければ評価を変えることは難しい」というのが結論になります。
ただでさえ「都知事が女性になったら不健全図書の締め付けが厳しくなるんじゃないか」という話も出ていますし、もしこのあたりを抑えるつもりなら、政策として規制反対を明言するくらい、立場をはっきりしてくれないとたぶんつらい。
あの頃と比べて、マンガ、アニメ、ゲームを取り巻く状況は確実によくなっているとは思いますので、過去のそれだけで決めつけるのはちょっとつらいかなとは思うのですが、既にそういう実績がある方でもあるので、ふわっとした玉虫色のそれでは難しいかなという感じ。
しかしまさか都知事候補がサリーちゃんとは…いろんな意味で時代を感じる…
(2016/7/21追記)
署名へのリンクを一旦取り消しました。主旨は良いと思えるのですが、いささか勇み足だったかもしれません。ごめんなさい。
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