「高度プロフェッショナル制度」によくあるポジティブな誤解

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ヨメレバCSS

 めでたく裁量労働の拡大が阻止され、次は高度プロフェッショナル制度(高プロ)に議論が集まっています。加藤厚労大臣のクソ答弁も話題ですね。

 しかしネットの意見を見ていると、あきらかな誤解(またはミスリード)が話の元になっているのではとも思います。

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まずは法案の条文について

 高プロについては次の資料を参考としています。

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案(平成30年4月6日提出)法律案要綱 

 割と長いのですが、ご一読されていることを前提に進めていきます。

「年収1075万以上が対象」ではない

 まずよくあるのが「年収1075万以上が対象」のような、年収1000万のスーパーサラリーマンが対象みたいな話。

 条文の条件には、

労働契約により使用者から支払われると見込まれる賃金の額を一年間当たりの賃金の額に換算した額が基準年間平均給与額(厚生労働省において作成する毎月勤労統計における毎月きまって支給する給与の額を基礎として厚生労働省令で定めるところにより算定した労働者一人当たりの給与の平均額をいう。)の三倍の額を相当程度上回る水準として厚生労働省令で定める額以上であること

とはありますが、具体的に1000万とはありません。

 これに関しては今、想定されている金額がそのあたりであること、基準は時代によって違うようになるので具体的な金額は明示できないなどあると思います。条文としては仕方ないかなと思う反面、平均200万円時代などになったら600万でも対象になるわけでこれでいいと思うことも無い。

理論上は年収357万から適用可能らしい

 さらに加えて、ちょっと裏技じみた計算で、24時間働きづめで年収から時給を計算し、実働時間以外を欠勤扱いとすることで実質の払いを抑えるテクニックが理論上は可能のようです。これは逆転の発想すぎる。

 これは極端な例で、理論上可能なだけで実際ここまでひどいことはないでしょうが、みなし残業や裁量労働による賃金切り下げが横行しているような業界であれば、このワザで現在500-600万あたりまでの層はターゲット範囲になるかなって思います。

成果報酬を約束しているわけではない

 次に多いと思うのが、成果給や成果報酬、脱時間給みたいな話と結びつけている感じのそれです。

 結果的にそれらの効果を狙っている(ことになっている)のは分かりますが、条文にはどこにもそれが書いてありません。

 これも具体的に書けと言われても難しい話なので、条文の上では仕方ないことかなとは思います。

条文には「労基法の休憩、休日、残業を適用外とする」としか書いていない

 では代わりにどう書いてあるのかといいますと、

労働基準法第四章で定める労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定は、対象労働者については適用しないものとすること

としか書いてありません。

 フル裁量を渡して成果に対して報酬を払う、いわば業務委託のような状態になるのであれば条文としてはこのような形になることは理解できます。でも結果として労基法の適用除外とするしか書いてないのであれば、意図はどうあれそういうことです。

成果報酬は高プロを導入しなければできないわけではない

 で、「成果報酬のためには高プロが必要」みたいな話になる感じですが、ちょっとまってほしいのはそれほんとに高プロがないとできないんですか? って話。

 よく挙げられるのは成果を上げていれば自由にできるとか実働時間が短くなるからプライベートの自由が利くとかでしょうか…それ今だとできないのですか?

 本記事を書こうと思ったのは、「高度プロフェッショナル制度と働き方の多様性」なる記事を見かけたからでもあるのですが。記事内では「優秀な人により多くの裁量と報酬を渡したい」気持ちがあるように見えて、それ自体は全然賛成しますけどどうして今それが出来ない。

いや、どうして高プロでそれが出来ると思っているのか。それがわからない。

 Googleやマイクロソフトの例があって「日本もこのような方向にいくべきでは」と問いかけられてもいて、それ自体は別に反対しないですが今、各日本法人が出来ていることが何故出来ない。

 これらが実現できないのは高プロが存在しないからではなく、会社の制度設計の問題ではないかと思います。多く給料を渡すことも、勤務時間を短縮したりすることも禁止されていないのでは?

 …結構、高度プロフェッショナル制度が「成果主義を実現する銀の弾丸」みたいな扱いを一部から受けているように思えて、それがすごく厄介な感じです。そういう会社は別に高プロが出来たって(良い方向には)変わらないでしょって思うのですが。

 また労働者側が、自由な裁量と報酬がほしいと思っているなら独立したら? って話にしかならないでしょう。いやまあ闇雲に独立を勧めているわけではないです。高プロの対象になるような実力ある方がそう思うのであれば、独立するのが自然ではと思うのです。

 実際にフリーランスやることはそう簡単ではなく、めんどくさそうで、裁量と報酬のある雇われが最高ってのはよくわかるわけですが、それならそういう待遇で扱ってくれるところ探すことになるのではないでしょうか…高プロがないからそんなことできないみたいなことを言っているところではなく

高プロは労働者側にとってデメリットしか無い

 そもそも「平均年収の3倍だったら労基法を一部除外する」みたいなことしか書いてない高プロ、労働者からするとメリットが一つも無いのですがそれで何をしたいのでしょうか?

 この条文読んで「よし! バリバリ成果を上げて会社に貢献するぞ!」って思う人います?

(います? って聞くといそうで怖いですけど日本には。こわい。)私は全く思わないです。思う要素がない。

 むしろ労働者で高プロを推している人には、高プロでしかなしえない労働者向けのメリットが条文のどこに書いてあるかを教えてほしいところです。運用でーとか導入してーとかではなくて、条文のどこに書いてあるかを。

 そんなわけで、よく見る誤解をまとめてみました。たぶんプログラマ・エンジニアはこの法案の被害を真っ先に受ける職種のひとつだよなーって思っていますがまあ今の自民党議席数だと普通に通されるんだろうなあとも思いながら明日も仕事に行きます。

参考:

第196回国会(常会)提出法律案

【法案版】「定額働かせ放題」制度・全文チェック!~「成果に応じた新たな賃金制度」との誤報も列挙!
高プロ制度は地獄の入り口 ~ High-pro systm is the gate to hell~

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